Q09:『エネルギーフィードバック』機能と『熱レンズ』

ランプ励起YAGレーザ溶接機「UJシリーズ」には全機種に『エネルギーフィードバック』機能が搭載されています。

 

■『エネルギ-フィードバック』機能とは?

 

発振されたレーザの出力検出を行い、電源に出力情報をフィードバックする事で、『設定値』と『出力値』の差を補正するという制御システムです。

レーザ出力状態を、『電源』にフィードバックする事で、レーザ出力を安定化させます。

 

■『エネルギーフィードバック』機能の効果は?

 

従来は人が補正を行っていた励起ランプ寿命によるレーザ出力管理を、『エネルギーフィードバック』機能がレーザ出力を自動出力補正する事で解消しました。

 

 ・ランプ劣化時のエネルギー自動出力補正(従来は手動で補正していました)

 ・ランプ劣化の監視

 ・出力エネルギー値を一定に保つ

 

 

■ 誤解されやすい事例

・エネルギー値を一定に保つ=加工の安定と認識されやすい。

加工の安定=『熱レンズ効果』等の抑制が重要であり、エネルギーフィードバック機能は『熱レンズ』(加工点の集光密度)を完全に抑制するものではありません。

また、高反射材料を加工する場合には、反射光の影響で不安定な動作をする場合もあるので、加工仕様に合わせて適切に使用する事が重要です。


『熱レンズ』とは?

 

レーザ光の中心部分の屈折率が、その周辺部分の屈折率よりも大きく変化し、レンズ作用を発揮する現象。(レーザ光の拡がりが変化する。)

YAGレーザ溶接の『熱レンズ』による主な不具合例として、レーザ発振を連続で行う場合、初期照射時に加工点のビーム密度の変化で加工が不安定になる場合があります。

(要は焦点位置が変動して加工が不安定になります)

対策としては不安定領域のビームを使用しない『捨て打ち』と言われる方法で回避するのが一般的です。

現在の発振器は、『熱レンズ』の発生をある程度抑える事のできる構造に進歩しているが

『熱レンズ』の発生が多い高出力な連続シーム溶接では、『熱レンズ』現象を気にせず高品質な溶接が可能なファイバーレーザを用いている例が多くなりました。

 

 

 

 

YAGレーザと熱レンズ効果  《YAGセラミックス》

YAGレーザ溶接機には単結晶のYAGロッドが主に使用されています。化学的安定性と加工性能、発振効率に影響が大きく、レーザ溶接機の性能に重要な要素となります。

単結晶は結晶成長によって作られるため、納期が長く必要であり、形状や仕様を限定されやすい欠点があります。

YAGセラミックスはYAGの多結晶体であり陶磁器の様に、成形したものを焼結して作るので、自由な形にすることが可能だそうです。

 

また単結晶の欠点を補うと期待されているのがYAGセラミックスであり、品質の向上により単結晶に近い出力を得られるようなったと伺い、能力査定を行ってみました。

 

結論:残念ながら、初期の熱レンズ現象が改善されないと、YAGレーザ溶接機での採用は難しい。

色々なアプローチで改善に取り組んでみたが、共振機等の最適化が大変なので簡単に置き換えする事はできない理由で保留。しかしながら数年前よりは品質が向上しているので今後に期待します。

 

YAGセラミックスの特徴と比較
利点

短納期、低価格

比較

『YAGセラミックス』と

『単結晶YAG』を比較した結果

1.YAGセラミックスは熱レンズ現象が発生しやすい。

(同条件下で単結晶と比較)

 

2.単発特性は単結晶YAGより若干良好である。

 

現状、プレミアムグレードYAGロッドがコストは高いが、効率と加工性能に寄与する点が多い事に変わりありません。

 

 

熱レンズ発生時の様子

 

 

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